催し物

特設コーナー

常設展示の一部のスペースを使って、当館の新収資料等を展示します。定期的に展示替えを行いながら、源氏物語、奈良絵本等、様々なテーマを用意いたします。

「新資料 写本『栄花物語』」
会期:平成26年2月26日(水)〜平成26年3月31日(月)
主な展示資料:写本『栄花物語』 (個人蔵)、版本 絵入九冊本『栄花物語』(個人蔵)
『栄花物語』をテーマに北村季吟が書き写したと思われる写本及び版下を作成したと思われる版本を展示しています。

特設コーナーの様子

<絵入九冊本『栄花物語』>

本文は抄出本文である。本文抄出の理由は跋文に「事ひろきにより」「巻毎におかしきふし又世のためしにもとおもふ所々をかきあつめて座右にし侍ぬ」とある。本文の抄出は、例えば、『日本紀略』という書名が「日本紀」の「略」本を意味するように、歴史記述に固有の著述の特性と説明できる可能性はある。
9冊のうち1冊は「目録并系図」である。本文は8冊である。
絵は半丁のものを含めて52面ある。絵を本文が跨ぐことはなく、必ず内容の切れ目にある。当然、文章は直前で切れている。
絵入版本は、表紙の色は浅縹。草花の型押がある。楮紙。袋綴。縦27.1p× 横19.3p。要するに普通の版本か、少し大きめにも感じられる。

<写本『栄花物語』>

本文は絵入九冊本『栄花物語』とまったく同じである。ほとんど字母まで同じである。ただし、「目録并系図」の冊と跋文はない。
表紙は金襴緞子。鳥の子紙。列帖装。縦23.6p、横17.0p。江戸初期から中期の体裁か。絵入版本よりやや小型。

ケース1
ケース1

<写本『栄花物語』>

絵はないが、絵の箇所には絵の枚数分だけの白紙があり、糊付けされている。一見絵の丁はないように見える。実際は絵があり、剥がされたのではないかと糊跡からは思われる。半丁の絵のところなど、何かが貼られていたけれども、それが剥がされたとしか考えられない糊痕がある。
絵の箇所の直前は12箇所については散らし書きになっている。他の箇所は散らし書きでなく通常の書き方で書き留められ、半丁の初めは文字が書かれていて、文字が終わるとそこから後ろが白い状態になっている。
また、一箇所(展示箇所)については絵の枚数の半分しか白紙がないところがある。列帖なので切り取られたわけではないことが確認できる。もとは絵の枚数だけ白紙のページがあり、切り取られて枚数が少なくなったとは考えられない。

ケース2
ケース2

<写本『栄花物語』>

「九巻抜粋本」の挿絵の中に絵入『源氏物語』(承応3年1654版)の挿絵に酷似しているものがあり、絵入『源氏物語』を参考に、それを粉本として作画している。粉本という言い方には疑問が残るが、出版の流れを考えると、『源氏物語』で成功した絵入り本の形を『栄花物語』にも適用したという方が考えやすい。そういう意味では基本的には『栄花物語』があとという考え方でよいと思われる。強い根拠にはならないが、次の事ともあわせ考えて、松村氏の判断でよい。
「本書が1661寛文刊から延宝3年1675刊書籍目録にかけて未載であることと、承応3年版『源氏物語』の挿画を粉本としているところから見て、延宝3年(1675)以後貞享2年(1685)以前刊ということは確実と思われる。」とされる。この推測はほぼ妥当と思われる。
奥に識語があり「季吟しるす」と書かれている。これはどう見ても書写者とは異筆である。

ケース3

ケース3
ケース3

<考察>

絵入版本の版木に被せる原稿である版下を書いた人物と本の書写者は同一人物ではないかと思われる。第一冊冒頭から、第八冊最後まで同じ調子。字母がほとんど一致する上に字が酷似。それでも完全に一致するわけではない。見れば見るほど字は酷似している。
異同はどう考えられるか。本展示では個別のものは省略する。大きいところとしては、写本一行目の末尾に信じられない誤写がある。すべてにわたって版本が正しい。版本を書写して誤りの程度の低い写本が生まれるとは到底考えにくい。ましてや同筆の可能性を強く感じる。やはり、写本が先。版本の本文の直接の親となったと考えられる。

ケース4
ケース4

なお、雲英末雄著『俳書の話』には、「季吟は能筆家で、仮名草子でも古典注釈書でもほとんど自分一人で自分の著述の版下を染筆している。驚くべき精力ということができよう。」という指摘があり、以上の推測を補強することになろう。

ケース4


次回の特設コーナー:
「春日懐紙」
会期:平成26年4月1日(火)〜平成26年4月下旬頃 ※展示終了日は、決まり次第お知らせいたします。
「春日懐紙」をテーマに、当館所蔵資料を展示する予定です。



問い合わせ先:
TEL.050−5533−2910 FAX.042−526−8604 
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